神鳴

こんな日は泣きたくなる。



世界を飲み込んでしまうような雨の音と、頭に響く雷鳴と。
身体は疲れているのに意識だけは明瞭で全然寝付けない。

自分の隣に居るべき人は、任務の為に昨日から居ない。
こんなひどい雨の音を聞いていたら、周りにはもう自分以外の誰も居ないような気がしてきて、まだ二日と経っていないにもかかわらず無性に逢いたくなった。

任務中は滅多に連絡は取れない。私用ならば尚のこと。
鳴らない電話を横目に見ながら寝返りを打とうとした、その時。

一段と大きな雷鳴が轟いた。

耳を塞いで目を瞑る。それでも音は絶え間無く身体の奥へと入り込み、気持ちをざわつかせていく。

落ち着かない。

独りで居るのが当たり前だったあの頃、こんな気持ちをごまかす方法はいくらでもあった。けれど他人の存在に慣れてしまった今の自分は、その内の一つも思い出すことが出来ない。
誰かを好きになることは、こんなにも自分を弱くもさせるのだと痛感させられる。

ゆっくりと目を開く。稲光だけが時折差込む暗い部屋の中で大きく一度深呼吸をしてみる。

二人で並ぶには狭いベッドの上が今日は何だか広々と感じられてしまうのも、きっと錯覚じゃない。

何に祈るでもなく独り心に思うこと。

寂しいだなんて言いたく無いけど、お願いだから早く帰ってきてください。