花見酒

どちらからともなく花見に行こうということになって、久々に重なったオフを利用して遠出することになった。

「綺麗だね~。でも、ちょっと遅かったね。満開は過ぎちゃったみたい」
「そうだな」
「まぁでも散りゆく桜を眺めつつ…ってのも風情があるよね」
「は?」
何やらごそごそと荷物をあさって取り出したのは20cm程の小振りのボトル。
「おい、それ…」
「えへへ~。ちょっと高かったんだけどね? 春季限定のスパークリングワインvv」
「どうしたんだよ、それ」
「花見と言えば花見酒でしょ、やっぱり」
「…あっそ…」

その時一陣の風が頭上を通り抜けていった。花吹雪が空を舞う。
「ああ~散っちゃう~…」
「いいじゃないか。幻想的で」
「でもさぁ…折角こんな綺麗に咲いたのにもったいないと思わない?」
「そうか? どんなものでも終りがあるからいいんじゃないか? 桜も年中咲いていたら綺麗だなんて思わないだろ」
「それはそうだけど。じゃあスコールは恋愛も終りがあるから楽しいとか思ってる? 僕とのこの関係も?」
「あ、いや、そういう意味じゃなくて…っ」
「確かに先のことなんて分からないけど。でも僕が君を好きだって思う気持ちに終りは無いよ。それだけは絶対だから」

それから、さっきのボトルを掲げてにかっと笑った。
「じゃ、飲もっか♪」
「……」