貴方に…

聖夜。星降るこの夜に貴方と共に在ることを感謝します。



The first Nowell the angel did say,
Was to certain poor shepherds in fields as they lay;
In fields where they lay keeping their sheep,
On a cold winter’s night that was so deep:
Nowell, Nowell, Nowell, Nowell,
Born is the King of Israel.
– The First Nowell –

「スコール~!」
窓際に立って、手招きをする。彼は読みかけだった本を横に置いてゆっくりと顔を上げた。
「…何だ」
「窓の外見てよ! すっごい綺麗だよ?」
いつもの彼ならだから何だと言うところだけれど、今日は何も言わずにこちらへとやって来る。そんなほんの少しのことがとても嬉しい。
「ほら、綺麗じゃない?」
「あぁ、そうだな」
窓の外には満天の星空。遠くに見える夜景も静かに瞬いている。

今宵は聖夜、クリスマス。大切な人と共に過ごす日。本来は救世主の降誕を祝うこの日も、今ではすっかりその意味を失って恋人や家族と楽しく過ごす日となった。
僕達も例に漏れずみんなとクリスマスパーティと称してお祭り騒ぎをし、夜になってからやっと部屋に辿り着いたのだった。
「あ、そうだ!」
「?」
「ちょっと待っててね~♪」
僕はスコールをその場に残し、入口の方まで行くと部屋中の明かりを全て消した。

遠くに、そして近くに。星の光だけでもこんなに明るい。
窓際に立つスコールの後ろ姿は何だか凄くいとおしくて、僕はそっと近づくと傍に在ったブランケットを手に取って後ろから彼ごとくるまった。腕の中でスコールが身じろぎしたのが判ったけれど、僕の手を払い除けようとはしなくって。それがまた嬉しくてぎゅっと抱きしめる。
「スコール」
「……」
「スコール?」
「Merry Christmas,アーヴァイン」

少しだけ首をひねって僕の顔を見上げたスコールは今までで一番優しい顔をしていて、それから僕達は引き合うようにキスをした。


もしもこの世に
神が居ると言うのならば
神様、貴方に感謝します

この人に出会えたことを
この人と共に在ることを

どうかこの人が哀しむことが無いように
かなうならばその先に光あらんことを

例えこの星が滅びようとも
この命果てるまで

どうか一緒に…