Sweets

だって僕は君が居ればそれで良いんだ。



~3月14日まであと1日~

「ね、スコール。考えた?」

「何を」
あれ、もしかして気付いてないのかな。
「ホワイトデーのお返しだよ~。スコールたくさん貰ってたじゃない?」
「……そうだな」
「そうだな…って」
…それだけ? ま、いっか。
「好きでもない奴から貰っても嬉しくないし、そういう奴にわざわざ返してやるほど俺はお人好しじゃない」
そうでしょうとも。でもここでこの話題を打ち切られるとまずいんだよね~僕としては。だから
「え~。じゃあスコールに聞いてもしょうがないかな~?」
わざとらしく言ってみたりして。
「…何だよ」
のってきたかも。スコール嫌いだもんね、こういう言い方されるの。
「スコール興味無いみたいだし~、どうしよっかな」
「いいから言ってみろ」
あ、ムキになってる。ちょっと可愛い。
「ん~だからね、お返しは何が良いかな~って。マシュマロとかキャンディとかってゆーでしょ。あ、クッキーもあったっけ」
あはは、スコール変な顔してる。やっぱり。
「僕もよく分からないんだけどマシュマロは本命とかいう話もあるしさ~。それで下手に誤解されても困るし、かといって何もなしっていうのも何だしね~」
「それで?」
「スコールは何が良い?」
「………はあ!?」
たっぷり30秒はかかったかな。そんなに変なこと聞いたつもりは無いんだけど。
「マシュマロと、キャンディと。スコールだったらどっち食べたい?」
「何で俺が…」
決まってるでしょ、そんなことは。でも今はまだ秘密。
「参考までに。ね、どれが好き?」
うわ、腕組みして悩んでるよ。めちゃくちゃ可愛い。
「…は…だ」
「え、何。聞こえない」
「マシュマロは嫌いだ」
そうなの? 僕、あれすごく好きなんだけどな。
「何で? あ、あの歯ざわりが嫌とか」
僕が言ったら、真赤になってそっぽ向いた。今日のスコールはほんっとーに可愛い、と思う。落ち着け、僕。
「あはは。図星?」
「悪かったな」
ぶっきらぼうに呟いて、スコールは行ってしまった。怒らせちゃったかな。

~3月14日まであと1時間~

お返しのプレゼントも用意したし、あとは朝を待つだけ。あと一時間。明日はホワイトデー。朝一で渡しに行こう。

~3月14日になって6時間~

もともと朝は強い方じゃないんだけど今日は特別。だって今日はホワイトデーだから。
まだ人気の無い静かな廊下を進んでいって、一番隅の部屋の前で立ち止まる。普段からロックをしていないことも知っているからノックはしない。いつもなら『ノックぐらいしろ』ってしかめ面をする君も、今はまだ寝てるから怒られる心配も無い。
ついでにベッドの上に乗っかって顔を覗き込んでみたりして。
「可愛い顔してるのに。これで起こすと凶悪なんだからサギだよね~」
寝つきは良いのに寝起きは最悪。僕も何度か部屋を追い出されたことがある。だけど…
「起きてよ~スコール。朝だよ」
全然起きない。あんまり起きないと襲っちゃうよ?
「起きてってば。スコール! スゥ!!」
「ん…」
よかった、起きてくれた。
「おはようスコールv」
「なっ…? 何でオマエがここに居るんだ!? 退けっ、重いっっ!!」
そんなこと言われても退きません。
「何でって言われてもね~。ハイ、これホワイトデーのプレゼントvv」
「!?」
「スコールマシュマロ嫌いって言ってたからキャンディね。それとピアス」
口をパクパクさせて呆気に取られてるみたい。そりゃそうだ、まだアタマ働いてないようだから。
「何…」
「気が付いてないと思った? ヴァレンタインにチョコくれたでしょ。部屋の机に置いてあった名無しのやつ。僕、君が部屋から出てくの見てたんだよね~」
ああ、まただ。スコール、真っ赤になってる。
「嬉しかったよ~。だからこれはそのお返し。もちろん受け取ってくれるよね♪」
「だって…この前…」
「ああ、あれ。スコール何が欲しいのかと思って」
スコールが信じられないって顔してる。
「僕だってお人好しじゃないからね。あげるのは君だけ」
額にひとつ、キスを落とす。それから口に。『好きだよ』って言葉も一緒に。
ね、これで信じてくれる?